グレープフルーツちょうだい
暑くなるとグレープフルーツが食べたくなる。
横一文字に真っ二つにして、スプーンですくう食べ方で。
小さかった頃、祖母の家で食べさせてもらった時のことをよく覚えている。
ガラスの器に入っていて、グレープフルーツ用の先のギザギザしたスプーンがあって、
お砂糖を振ってくれた。
多分その頃の私はグレープフルーツをあまり食べたことがなくて、
その食べ方がとても特別なものに感じられて、印象に残っているのだろう。
果物にお砂糖をかけていいだなんて、きっと衝撃だったろう。
先日亡くなった祖母にも、祖母に10年以上先だって亡くなった祖父にも、
えらいこと可愛がってもらったなぁと、今になって思う。
ずっとそうだったから、それが普通のように思ってしまっていたけれど
時折思い出す彼らとの記憶を今の私の視線で見ると
端々からその愛を感じる。
それはもう一方の祖父母も同じで、両家の家風は随分違っていたけれど、
私も弟も大切に見守られ、育てられたのだなぁと思う。
そういう記憶があることで、私は少ししっかりできている。
おじいちゃんおばあちゃんが大切にしてくれた私を、ぞんざいに扱ってはいけない。
順番がちょっとおかしいかもしれないけれど。
今年の夏は暑くて、毎週のようにグレープフルーツを買っては冷蔵庫に入れている。
時代のせいか、住む場所の違いか、今手に入るグレープフルーツは果肉が赤くてお砂糖をかけなくてもじゅうぶん甘い。
私がグレープフルーツを切ると、次男と三男がどこからともなくやってきて、
小鳥の雛のごとく口を開けて待っている。
スプーンですくった果肉を次から次へ彼らの口に押し込む、それはそれは幸せな時間である。
きっとすぐ、自分で食べられるようになっちゃうんだろうね。
彼らが大人になった時、こんな風にグレープフルーツを食べたことを覚えているのだろうか。